芽胞

芽胞を形成するBacillus cereus
(田中美智男氏提供)

細菌細胞は周囲の環境がその細菌の生育に不利な状況になると死滅していくのが一般的です.しかし,ある種の細菌は乾燥,高温などの環境条件が悪くなると芽胞とよばれる耐久器官を作り生き延びていきます. この芽胞を形成する菌で好気性の細菌をBacillus属,嫌気性の細菌をClostridium属と呼んでいます.両者ともグラム陽性の比較的大きい桿菌です. 芽胞形成菌であっても栄養バランスがとれていて分裂増殖しているとき(栄養型)には,芽胞を形成しないときがおおく,バランスがくずれたときに菌体内に芽胞を生じます(スポランギウム).菌1個あたり出来る芽胞の数は通常1個ですが,まれに2個のときもあります. 芽胞では代謝が行われていない休止状態で細菌の増殖などの生物活性がほとんど見られません. (芽胞は細菌胞子とか内生胞子とかよばれることもあります)

耐性

物理的,化学的刺激に対して強い抵抗性を持っています. 水分の少ない濃厚な原形質と核をあつい殻で覆っており,乾燥熱,消毒剤のような化学薬品処理,紫外線,放射線照射に対して強い抵抗性を示します.120℃15分のオートクレーブであらゆる芽胞は完全に死滅しますが,多くの芽胞は100℃の煮沸にも耐えられます. 芽胞は一般的にエタノール消毒には耐えるために芽胞の汚染が考えられる場合の消毒にはヨードや塩素系での消毒が必要となります. スポランギウム状態ではなく,菌体から遊離した芽胞は特に耐性で,数10年にわたり生存することができます.

芽胞は菌種によって菌体内にできる位置が異なっています.あるものは菌体の真ん中に,あるものは菌体の端にでき,後者は太鼓バチ状ん高千を取ります.また芽胞の形は破傷風菌の芽胞は球形ですが枯草菌の芽胞はやや楕円型です. 芽胞は屈折性の強い物質であり,位相差顕微鏡などでみると,芽胞だけが強く光って見えます. 芽胞は光を通さず,染色もされにくい性質をもち,グラム染色や単染色では抜け像として観察されます. 石炭酸フクシンを使った芽胞染色法によって観察できます.

成分

また,芽胞ではその水分の60-70%は結合水の形になっており自由水をもたない脱水状態になっています. 多くのRNAや一部のタンパクはDNAの周り集まり芯部を形成しています。芯部にはジピコリン酸や大量のカルシュウム・イオンがあり、これらの成分のおかげで、高温に対してもその構造を維持していけるのだと考えられています。

芽胞は温度,湿度が適当になると発芽し、再び増殖型(栄養型)細菌となり増殖を続けます。このように、細胞の中に、ある構造ができることは、真核生物にみられる細胞小器官と類似した構造ということができ、細胞分化のモデルともなっています.
過程 内容
芽胞形成 炭素,窒素源が欠乏し,栄養条件がととのってない条件下で,対数増殖期が終了した時期に始まります.また,芽胞形成には,栄養細胞機能に関連する遺伝子の不活性化にともない,芽胞形成遺伝子の活性化がおこります.それにともないこの時期に特有の遺伝子産物として新たな酵素や代謝物が作られ,芯部(核,細胞質)ができ,皮層ができると同時に,染色体を凝集してリボソームとタンパクの一部を濃縮し硬い被膜で覆い包み,呼吸などの代謝はほとんど行わず生物活性をほぼ完全に休止させます. 培養が古くなると母細胞が崩壊し去り,残された芽胞は遊離し完成された芽胞となります. 新しい構造が作られていきます.生物活性は休止します.
発芽 酸化などの要因によって芽胞殻に損傷が加えられた場合とか,グルコースやアラニンのような発芽剤と接触すると発芽の活性化がおこります. 芽胞殻変性後,芽胞の融解,水分の取り入れなどの芽胞変性をへて細胞質から新たな栄養細胞が出現します.
栄養型サイクル 栄養,環境が好転すると再び分裂増殖をはじめます.

芽胞の構造は,中心から コア,        芽胞壁, 皮層,芽胞膜,外膜, 芯部,       芽胞固有膜,皮層,芽胞膜,外皮 芯部,       芽胞固有層,皮層,芽胞膜,外膜 芯部,       芽胞固有層,皮層,芽胞膜,上皮 芯部(核,細胞質),芽胞固有膜,皮層,芽胞膜,外膜○            芽胞壁, 皮層,内芽胞殻,外芽胞殻 細胞質,厚い細胞壁,皮層,        芽胞殻 コア, 芽胞細胞膜,発芽細胞膜,皮フ芽胞殻 芽胞の位置 単在性:破傷風菌(太鼓のバチ状) 中心性:炭疽菌 偏在性:ボツリヌス菌 枯草菌 芽胞の位置,形は鑑別診断に役立ちます. 大賀ハスと名づけられているハスは遺跡から出土した種で,大賀氏が発芽させたものです.


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