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| 毒素原性大腸菌(ETEC)の線毛(CFAIII) (本田武司博士提供) |
細菌には鞭毛より細く,短い線毛構造があります.菌体の表面から外側に直鎖状に伸び波動構造はしていません. 一般的に線毛は径3-10nm, 長さ0.2~2μmの中空の繊維状構造物です.主にグラム陰性菌にみられ,菌体表面に数十~数百本あります.線毛は多く種類のタンパク質でできていますが,線毛の主体はピリン(またはフィンブリン)という球状タンパクのサブユニットで構成されています.ピリンが少しずつずれて重なり,螺旋状に配列して長い円筒形の繊維状の線毛を形成しています.ピリンタンパクのアミノ酸組成は一般的に疎水性アミノ酸残基の含有量が高いのが特徴です.
線毛の構成タンパクの中でピリンが圧倒的に多く線毛はピリンのみで構成されていると考えられたこともあったが,現在では線毛はアドヘジン,マイナーピリン,ピリン,アンカーなど多くの種類のタンパクによる複合体であることがわかっています.
線毛の基部は細胞膜から外へ突出し細胞壁を貫通している. 鞭毛と運動機関ではなく,鞭毛のようにモーターによって激しく回転運動をすることはありません.ピリンなどの構成タンパクは細胞質内で合成されて,それが先端まで運ばれて線毛構造を構築しています.
菌体線毛は数百本有り,宿主細胞に接着するときに宿主側の感染対象となる細胞表面にあるレセプターを認識し,結合する役割を果たしています.これにより細胞への定着を確実なものにし感染を引き起こす役割を担っています.淋菌は線毛遺伝子の配列を次々に変異させて,線毛のエピトープを変化させて宿主の免疫機構を免れます. 性線毛は細菌の有性生殖(接合)の際に遺伝子を伝達する通路の役割をはたしています. 性線毛は雄株の細菌表面に1-数本存在し,直径9nm程度で普通線毛より太く,また長さもやや長いのが特徴です.雄株は雌株に接合して,線毛の中心の孔を通じてプラスミドを雄株から雌株の細菌細胞へとおし,雌株に遺伝子供与する役割をもってます.
線毛によって細菌は感染宿主表面組織に付着します(付着特異性). 多くの線毛はその遺伝子をプラスミド上にもってます.
ファージの受容体ともなっているものがあります.F線毛はRNAファージ,繊維状DNAファージの受容体となっているものがあります.また,繊維状DNAファージの中にはI線毛に特異的に吸着するものもあります.