滅菌法
滅菌法と一般に呼ばれるものの中には実際は滅菌,つまり完全に生物を死滅させることではなくむしろ消毒といえるものもある.それらについては「"」で示した.
- 加熱による滅菌法
熱は菌の酵素類などのタンパク質やDNA,RNAなどの核酸も変性させ,また膜構造も不可逆的に破壊し細菌の増殖を不可能にします.
火炎滅菌法(焼却)
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| 白金耳の火炎滅菌
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火であぶり炭化させてしまうとすべての微生物を死滅させることができます.火炎の熱によって変性したり破壊したりしない器具についてよく用いられる簡便な滅菌方法です.細菌検査室で白金耳,白金線などをブンゼンバーナーの炎で発赤させたり,試験管の口を焼く無菌操作法がこれに相当します.菌のついた白金耳などではすぐに炎の中にいれると菌が飛び散る可能性があるので前もって十分に乾燥させたり,別に砂の中で菌を除いてから火炎の中にいれる注意が必要です.これは特に感染力の強い結核菌をあつかう場合に必要です.
別の方法として,ビーカーや鋏,ガラス棒をアルコールで濡らし,それに火をつけ熱しながらアルコールをすべて飛ばすやり方で,簡便な方法です.
また,病原菌に汚染していると思われる衣服や動物の死体などを燃やす焼却炉もこの方法の一種といえます.この方法では完全に灰化させる必要があります.水分の多いものでは焼却炉に重油などを添加することによって完全に焼却できるようにします.
これは実に簡単な方法で西部劇では銃創から銃弾を取り出すときに焚き火の火でナイフを焼いてナイフについている菌を殺し,手術をするという場面をしばしば見ます.また,私は子供のころ刺を刺したとき母親は針の先をマッチの火で焼いてからその針で皮膚を開き刺を浮き上がらせて取られたことがあります.焼却滅菌法はペスト患者の衣服を燃やしたり,家ごと焼却したりしたのも焼却することによって病原を抹殺できると考えた中世ヨーロッパの人たちがいました.これらはいずれも民間に伝わる火炎滅菌法といえます.
- 乾熱滅菌法
オーブンを用い,135-140℃で3-5時間,160-170℃で2-4時間,180-200℃で0.5-1時間加熱し内部温度を上げた後に自然冷却することで滅菌します.芽胞を含めてあらゆる生物を死滅させることができます.乾燥状態なのでタンパク質,核酸が熱変性しにくいために同一温度では湿熱滅菌よりも乾熱滅菌の方が殺菌効果が小さく長時間を要します.熱に強いガラス製品や陶器,湿熱により濡れることを嫌うピペットなどの器具を滅菌する場合に用いられます.滅菌時間は可燃性のものでなければより長く数時間程度まで長くすることも可能です.しかし,溶液,容易に燃えるもの,プラスチック製品では不適です.
- 蒸気滅菌法
常圧蒸気"滅菌"法
常圧であるために圧力に強い装置は必要なく一種の蒸し器による方法です.比較的簡単に作成可能であり一時はよく用いられました.コッホの釜などは下から100℃の蒸気を出して殺菌しますが,オートクレーブなどに比べると時間がかかり,また芽胞は殺すことができないので滅菌とはいえません.
加圧蒸気滅菌法(オートクレーブ)
約2気圧下の飽和蒸気圧下で121℃で15-20分間滅菌する方法で一種の圧力釜による方法です.芽胞を含めすべての生物を死滅させることができます.あらゆる生物を除く必要がある培地や湿ってよい手術器具などの医療器具,ガラス器具,線維などを幅広く滅菌することができます.この方法では完全に空気を追い出して飽和蒸気下にする必要があるが,現在ではこれらの操作をオートマチック化した滅菌器が発売されており,短時間で滅菌することが可能でもっとも簡便でしかも信用のおける確実な滅菌方法といえます.滅菌時間は大量の液体などでは十分に熱が内部まで浸透しないのでより長時間かけて滅菌する必要があります.
- 煮沸"滅菌"法
沸騰水に浸けて殺菌する方法.熱に強い芽胞菌に対して効果があがらないが,栄養型菌にたいしては十分な効果が有あります.代表的なものにフンメルブッシュ滅菌器があります.通常,100℃で15分間行ないます.また,湯の中にNa2CO3を1%加えと金属の腐食を防げます.
- 低温殺菌法
- 間歇滅菌法
煮沸滅菌法を繰り返すことによって芽胞をも滅菌する方法です.平圧蒸気滅菌を1日15-30分間,または80-100℃で湯浴を30-60分間,3-5日間にわたって行なうものです.これにより栄養型菌は殺され,生き残った芽胞は常温近くで発芽し抵抗力の弱い栄養型菌になったところで次の加熱をおこない菌を死滅させます.これを3回繰り返すことによってほぼ完全に滅菌することが可能です.しかし,この方法は発芽が十分におこる培地などに応用可能ですが,栄養分の不十分なものに対しては必ずしもできるわけではありません.
- 照射滅菌法
放射線滅菌法
ガンマ線は透過性に優れているために,十分に包装された使い捨てのプラスチックの医療器具(注射器,試験管),シャーレなどの滅菌に用いられています.現在ではガス滅菌に代わり広く用いられるようになりました.この方法では60Co,137Csなどの密封放射性アイソトープから発するガンマ線を用います.紫外線と異なりガンマ線はプラスチックをも突き通すので影になった部分にもおよび滅菌が可能で,製品を箱の外から照射することによって滅菌が可能で,大量の製品を滅菌する場合に特に優れています.照射量は物品の微生物による汚染度,安定性,包装法の諸条件によって実験的に決められます.この方法は完全に遮蔽された照射室をもつ許可された施設が必要で,一般には企業ベースで行われています.
紫外線滅菌法
260-280nmの紫外線ランプの射光によって物体に表面を滅菌する方法です.この帯域の紫外線はDNAの損傷などによる強力な殺菌効果を持ちます.手術室,無菌室,調理室で用いられるが,影になった部分については殺菌できません.また,人体が直接紫外線を浴びると害をおよぼすので注意が必要です.
高周波滅菌法
水分子は+とーの極性を持ち電場の方向へ動く性質をもつため,電場が変化しやすい高周波をあてて誘発すると熱が発生し,この熱によって殺菌することができる.9000Hz以上の音波をあてて細胞を破壊します.水を含まないものについては効果が期待できません.
- 化学的滅菌法
ガス滅菌法
エチレンオキサイドガス
エチレンオキサイドガスは40℃でほとんどの微生物を殺滅でます.エチレンオキサイドガス滅菌法では加熱によって変性したり水分を嫌うゴムを使った医療用器具や精密機械を隅々まで滅菌するときに用いられます.エチレンオキサイド・ガスは有毒であるために被滅菌物件はすぐには使えず包装からガスが抜けるさせるために一定の時間(数週間)放置する必要があります.エチレンオキサイドガスは単独では爆発性であるので炭酸ガスをボンベに混入しして危険を防いで使用しています.
二酸化塩素ガス
常温で利用できるので熱変性をおこさないが,毒性を後で確認することが難しいのが問題です.
薬剤滅菌法
薬液による殺菌方法であるが,単独ではすべての微生物を殺滅できるわけではなく,消毒法として用いられる場合がおおい.
- "濾過(除菌)滅菌法"
細菌を通さない,ある一定の大きさの孔が無数にあいた濾過フィルターを用いる方法で,加熱や化学変化による変性がおきやすい蛋白質を含む血清やビタミン,糖類溶液を細菌を通さない濾過膜によって濾過し,細菌を取り除きます.一般的に用いられているのはニトロセルロースでできたメンブランフィルターで,孔の径は0.22または0.45μmであり,細菌を通しません.注射筒などで加圧したり,濾液が行く側を減圧にして溶液がフィルターを通過できるようにします.様々な方式がありますので目的に適したものを使用します.この方法は細菌は除くことができますがウイルスは除くことができないので厳密な意味では滅菌とは言えませんが習慣上濾過"滅菌"と呼んでいます.点眼薬,注射薬,および菌を含まない気体(例:ヘパフィルター)について用いられます.
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