地上最強の毒素によるボツリヌス中毒


食品中で産生されたボツリヌス毒素によっておこる神経症状を主張とする食中毒である、ボツリヌス毒素は酸に耐性があるので活性を失わず胃を通過します.しかし、易熱性であるため加熱して食べる食品では中毒は起らない。イズシ、ソーセージ等加熱せずに食べる食品で起っています.また、最近は経口摂取したボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が腸管内で毒素を産生しておこる乳児ボツリヌス症も知られるようになりました.

「腸詰」中毒として古くから知られていたボツリヌス中毒

 ボツリヌス菌は嫌気性有芽胞菌で、食品中でボツリヌス毒素を産生し、食餌とともに毒素を摂食しておこる神経症状を主症状とする食中毒を起こします.ヨーロッパでは古くからソーセージやハムを食べてなる奇異な食中毒があることが知られていました.特にハム、ソーセージの製造、消費が多い南ドイツでは早くからこの疾患に気付いていました.`1870年、ミューラー博士はこれを、ボツリヌス(botulinus,ラテン語で「腸詰め=ソーセージ」を意味するラテン語botulus)中毒と命名しました.

ボツリヌス菌の発見

 ベルギーでは葬式には楽団が葬楽を演奏する伝統がありました.1895年12月、葬儀の34名の楽士が昼食をとりました。食事には塩漬けにしたハムが出されました。その翌日から、その大多数がボツリヌス中毒特有の麻痺を起こし、その内13名が重症となり、内3名が死亡しました.ヴァン・エルメンゲム博士はハムの残りと死亡者の脾臓から嫌気性有芽胞菌を分離し、この菌を詳細に調べ、この菌が恐ろしい毒素を産生するボツリヌス中毒の原因菌であることを突き止めボツリヌス菌と命名しました.

 ボツリヌス菌の発見当初からボツリヌス毒素は知られていました.ヴァン・エルメンゲム博士は、ボツリヌス菌は動物の体内で増殖しないが保存食品の中で増殖すること、毒素を産生すること、動物によって毒性が異なり、5分の煮沸によって毒素は破壊されること、毒素は酸に安定で、アルカリに不安定である等現在知られている毒素の基本性質をその当時既に報告しています.

日本でのボツリヌス中毒

 日本では戦後から現在まで北海道、東北地方でイズシ,キリコミを食べたため400名を上回る患者がでており,死亡率は20%を上回っています.これらはいずれもE型による中毒です.イズシ以外に輸入した瓶詰,缶詰や、熊本名物の芥子蓮根でも起っています.

症状

 潜伏期は5時間〜3日で、多くは12〜24時間で発症します.発症初期には悪心、嘔吐、引き続いて視力低下、遠近調節障害、複視、散瞳、対光反射の遅延などの眼症状、また、構音(発声)障害(しわがれ声)、嚥下障害等の球麻痺症状、進行に伴い腹部膨満、横隔膜麻痺による呼吸不全によって死亡します.症状から、喉頭ガン、脳梗塞と診断されている場合もあり、早期の診断が重要です.抗毒素血清療法が可能です.

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