Update 2003/09/25
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プラスミド


プラスミドとは

プラスミドとは細菌や酵母の細胞質内にあって,染色体DNAとは独立して自立的な複製機構をもち,細胞分裂では娘細胞に安定して受け渡される一般に環状型のDNAです.プラスミドはどの細菌にも存在するというわけではありませんが,一方,複数の種類のプラスミドをもつ細菌も珍しくありません.また、大きさも数kB~数百kB(染色体DNAの0.01~5%)と様々です。また、コピー数も1コピーから数千コピーまでありますが、コピー数は普通何らかの機構で一定に保たれています.
通常、よじれた構造(ツイスト構造,ccc[covalently-clonsed circular] DNA)をもち、物理的な力にも強い構造となってます.通常,cccDNA以外に,二重鎖DNAの一方の鎖だけが切断されツイスト構造が解除されて環状に開いたopen circular (oc)DNAや,二重鎖が完全に切断され直鎖上になったDNAも一部含まれています. 代表的なプラスミドとしてF因子,R因子(薬剤耐性因子),P因子,PF因子,コリシン因子,毒素産生プラスミド,変異誘導プラスミドがあります.

伝達性

 プラスミドの中には接合によって他の細菌に移ることができるもの(伝達性プラスミド)もあるし、また、他の伝達性プラスミドと共存することによって可動化されて他の細菌に伝達するものもあります。

種類

F因子

F因子とは大腸菌で発見されたもので,供与菌の遺伝子の一部まはた全部を接合によって伝える子tができるプラスミドです. F因子には大腸菌の中で大腸菌の染色体DNAとは別に単独で存在するF+と,大腸菌の染色体DNAに挿入して存在するHfrがあります.また,F因子に感染していないものはF-といいます. 接合はF+とF+同士,F-とF-同士では接合は起こりませんが,異種間で起こることがあります.

接合の過程(例:大腸菌)

  1. F+の線毛の先がF-と結合します.
  2. F+供与菌とF-受容菌が接合橋によって接合します.
  3. 接合するとF+菌内のFプラスミドの一方の鎖に切れ目が入り,相補鎖の複製が始まります.
  4. 同時にF-で相補的な鎖が複製されて両菌は分離します.
  5. F-はF+へ転換します.
接合は細菌も「性」をもつという意味がある.これは細菌がお互いに遺伝子を移動させているとう現象の発見から見つかりました. このような現象(接合)にはFプラスミドが関与しています. 細菌にはプラスミドの一種のF因子をもつ菌(F+)とF因子をもたない菌(F-)があります. F+菌はF-菌に近づくと性線毛をのばしてF-と結びつき,F-菌をたぐり寄せ結合します.両菌は一時的につながった状態,すなわち接合の状態になります.このとき,F因子は性線毛を通ってF+菌からF-菌に移行します.DNA遺伝を伝達しすると,受容菌もF+になります.(この場合,ある一定の頻度でF因子とともに供与菌の染色体のDNAも受容菌に伝達されることがあります.) この場合,F因子保有菌はまず自らのF因子と染色体DNAを分解し,ある一点から受容菌へと伝達,複製していきます.このとき,伝達が途中で止まってしまうと,受容菌は供与菌からF因子の一部と染色体DNAの一部ともらったことになりますが,F+になることがでず,自らは他の菌へ伝達複製することはできません.

Hfr

通常のF因子をもつ菌(F+)では染色体への組換は10-6程度の低頻度でしかおこりません.しかし,DNAにF因子が組み込まれたHfr(高頻度組換え)と呼ばれる菌ではF因子が組み込まれた近くの染色体を高頻度でF-菌に導入するため,組み換えが起こりやすくなり,細菌の進化に関係していると考えらます. HfrとF-が共存するとHfr菌の一部から接合管が伸びてきて,F-と接合します(Fプラスミドがもつtra遺伝子産物によります).この接合管はF-菌の細胞壁に穴をあけ両者はつながります.Hfr菌は自身の染色体DNAのFプラスミド上のoriTのところで切断し,一本鎖となったものが移動します.切断された部部のどちらか一方を先頭にしてF-菌へ入ります.このようにしてF因子はF-へと伝わります.供与菌に残された一本鎖は供与菌内で複製され,再び2本鎖DNAとなります.受容菌に移動したDNAは受容菌内で相補鎖が複製され,新しいプラスミドとなります.

なお,プラスミドはそれ自身が他の菌へ移動するだけでなく,供与体である菌のDNAも同時に運ぶときがあります.プラスミドは菌体の一本鎖DNAに組み込まれ,それが受容菌へと移動し,そのDNAは2本鎖となり受容菌の染色体と遺伝子の組換をするものがあります.このようにして別の菌体からの遺伝情報が組み込まれます.

プラスミドの意義

 細胞増殖など菌の生育に必須な遺伝情報は染色体DNAにあるのが通常で,プラスミドは通常に増殖していくために必須の遺伝子は普通もっていません.しかし、プラスミドは特定の環境に細菌が置かれ場合や病原性を発揮する場合などはプラスミド上の遺伝子が優位に働くこともあり,細菌の多様性を保つのに役立っています。 大型プラスミド(R因子,F因子)は接合に関する遺伝情報群をもつ場合があいりますが,小型プラスミドはこれをもっていないため,自分自身では接合により伝達できません.しかし,大型の伝達プラスミドと共存する場合には伝達できる場合があります. プラスミドには薬剤耐性,病原因子,酵素などの遺伝子があることが知られているが,どのような働きをしているプラスミドなのかは実際にはよく解っていない場合が大半で,このようなプラスミドをcryptic plasmidと呼ぶことがあります.

Hfr菌とF-

病原性とプラスミド

病原性に関与する遺伝子を運ぶことも多く、下痢原性大腸菌がもつEntプラスミドは腸管毒(エンテロトキシン)や定着因子の遺伝情報を運んでいるものや、赤痢菌のように細胞侵入性に必須の遺伝子を運んでいる場合、その他溶血毒等の遺伝子をもつものも多くあります。また、薬剤耐性遺伝子をもつプラスミドのほか(R因子)、バクテリオシンの遺伝子をもつものもあります.

組換遺伝子ベクター

 また、遺伝子工学の分野では,プラスミドがサイズが小さく分析しやすいことなどで遺伝子をクローン化したり,遺伝子産物を大量に産生させることのできるベクターとして利用され、きわめて有用な道具となっています。

なぜプラスミドによって薬剤耐性遺伝が運ばれるか

薬剤耐性遺伝子はよくプラスミド上にのっているが,その理由として考えられるのは,まず,コピー数が多く,強力な薬剤に対しても耐性物質(酵素)を産生し対抗できるという有利な点があげられます.第二に,また,トランスポゾンで薬剤耐性を獲得すると必須の遺伝子に挿入され致死となる可能性があるが,プラスミドの存否は一般に菌の増殖に関係せず,生存上有利と考えられます.また,薬剤耐性になるために染色体の突然変異を待つよりも外来性の薬剤耐性遺伝子を獲得したほうがより効率的であるということも考えられます.
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