索引[微生物の世界] [グラム陰性菌]
他のテーマ[大腸菌] [エロモナス]
[ビブリオ] [赤痢菌]
サルモネラによる疾患
サルモネラによる疾患の主なものはチフス性疾患と急性胃腸炎があります.
1.チフス性疾患(チフス型サルモネラ症)
サルモネラの中でヒトにチフス症を起こす血清型はチフス菌Salmonella Typhiとパラチフス菌S. Paratyphi-Aです.とくにS. Typhiによる腸チフスは典型的です.
初期(第一週)
チフス菌,パラチフス菌は食物や飲料水の摂取によって取り込まれ,小腸のパイエル板から上皮細胞を傷つけることなく侵入増殖し病巣を形成します.さらに腸間膜リンパ節など各所のリンパ組織を経て血中に入ります.この時期には血中に菌が証明されます.悪寒とともに体温が上がり約1週間後には39-40℃の高熱が続くようになります.胸腹部のバラ疹,脾腫,白血球数の減少,徐脈などが現われます.
中期(第2週)
2週間目ごろから肝臓のクッパー細胞や脾臓の細胞をはじめ胆のう,骨髄,腎臓,肺などの全身の網内系細胞内に侵入増殖すると浮腫を起こし臓器の腫大がみられます.この時期になると菌は胆汁中から小腸に排出され,糞便中や尿の中に菌が証明されます.39-40℃の高熱のため無気力状態,いわゆるチフス顔貌を呈します.またリンパを介して血中へでて全身に回り増殖性炎症,壊死を引き起こし敗血症を引き起こします.またチフス性疾患から骨髄炎,脾腫,胆のう炎,関節炎,虫垂炎と続発する場合もあります.
後期(第3週)
この時期には腸管の病巣が潰瘍を形成するために腸出血,腸穿孔,腹膜炎を起こしやすく,腸出血がおこり死に至ります.回復へと向かうと体温は正常に戻ってきます.
症状としては発熱,血圧低下,徐脈,ばら疹,肝障害がみられ,下痢の特徴としてははじめは便秘気味であったのが時間が経つにつれて下痢へと移行する場合がある.
S.Typhiはヒトにしか感染しません.
S. Paratyphiによって起こるパラチフスは腸チフスに類似するが腸チフスより軽い症状です.パラチフスA,B,CとありますがパラチフスA法定伝染病に指定されています.
腸チフス菌はVi抗原(莢膜抗原)をもちます.
サルモネラ食中毒(サルモネラ腸炎)
チフス性疾患の起因菌以外の亜群Iおよび一部の亜群IIIのサルモネラは小腸上皮細胞への侵入性を有し急性腸炎をおこします.感染源は牛乳,卵などで経口的に摂取し,食中毒菌としてはめずらしく強い侵入性をもっていますが、毒素の産生は認められておらず典型的な感染型の食中毒をおこします.
症状
潜伏期は10-30時間で,嘔吐,激しい腹痛,水様性,時には粘液性の下痢,血便(特に小児で)を出し,38-40℃の発熱,倦怠感などの急性胃腸炎の症状をとります.通常は2,3日で回復します.この菌は侵入性を有するため菌血症,骨髄炎,関節炎,髄膜炎,尿路感染症,呼吸器感染症をおこす場合があり、稀に重症化し意識障害,けいれん,多臓器不全をおこすこともある。また他の食中毒に比較して回復に時間がかかり,無症状になっても穂金状態が続き,便への排菌期間が1ー3月と長くなる場合もあります.
疫学
この菌は数百種の血清型が存在しますが、ドルトネル菌,Salmonella Typhimurium(ネズミ・チフス菌),S. Enteritidis(エンテリティディス菌)等が食中毒の主要な原因菌となっています.
サルモネラはブタ,ウシ,ニワトリのような家畜,家禽のほかにイヌや,ペットとして飼われているカメなども保菌獣です.原因食としては汚染されたニワトリの鶏卵,ブタ,ウシ,ニワトリなどの食肉および牛乳や乳製品等が主です.
他に食肉を使った加工食品,食中毒発症には107個以上のサルモネラが口から入る必要があり,少量の菌量摂取は通常無害でありヒトからヒトへの接触感染はほとんどありません.しかしサルモネラに対する感受性は乳幼児と成人とでは著しい差があり,乳児は成人よりもはるかに高い感受性があり少量の菌量でも発症する傾向にある.しばしば集団食中毒として発生します.ヨーロッパ,米国,日本と世界各地で多くみられます.
| 日本では元来卵を生で食べる習慣があるが、外国ではまれです.海外では目玉焼きも両面焼きが普通であり、十分熱を通して食べる習慣があります.これは、S. Enteritidisによる鶏卵汚染が世界的に広がっていることとも関係があります.海外から輸入された種鶏を通じて日本でもこの菌による汚染が広がっています.鶏卵は卵巣内にある間に感染します.この菌による食中毒は日本でもここ数年激増していることから、生卵を食べる習慣も危うくなっています.
|
発症機構
予防
この菌加熱による死滅するので,加熱処理は食中毒予防有効な手段である. サルモネラはネズミ,ハエ,ゴキブリ,ネズミなどが媒介として汚染するのでこらの駆除,侵入防止をすることが大切です.
しかし, S. Enteritidisは,この菌に感染したニワトリの糞便に鶏卵の殻の外側が汚染される場合と,菌が卵管を通じて卵が汚染され,産卵時に卵内に本菌が感染している場合があります.従ってこの場合は鶏卵の殻の外側を清潔にしても菌の食品への汚染は防げない.従って予防として,この菌に感染していないニワトリの飼育と産卵,および過熱によって食中毒を防ぐことが可能であります.
治療
抗生物質は排菌短縮には効果がなく再排菌をおこす場合があるとの考えもあり一般には用いない.しかし重症例では症状軽減には効果があるといわれる.
サルモネラと抗原性
サルモネラ属はO抗原,H抗原,K抗原にそれぞれ血清型により型別されています.
O抗原
サルモネラは複数のO抗原をもつものがほとんどで,この抗原は1つの主抗原の分布により菌群が決定されます.
菌群は1~67までのアラビア数字で示され,主抗原の分布状態によりO2群から067までの45群に区別されています.
H抗原
易熱性の鞭毛抗原です.H抗原は鞭毛をもたないものには存在しません.
サルモネラ属は2種類以上のH抗原をもっている菌(複相性)と1つの抗原しかもっていない菌(単相性)があります.複相性は同一の菌体で混在することがありません.
K抗原
サルモネラのK抗原はチフス菌,パラチフスC菌などのVi抗原です.これらの菌は新鮮分離株で菌株の免疫に関与しています.また,敗血症をおきします.
戻る