クラミジア
特徴
クラミジアは生きた動物細胞内でのみ増殖できる偏性細胞寄生性の細菌です.かつてウイルスと分類されていたこともあるとおり,細菌と比べてもさらに小さな生物です.クラミジアは以下の通り,明確な細菌としての特徴を備えています.
- 原核細胞としての構造をもち、感染性のある基本小体は球菌のような形をしています.グラム陰性で、夾膜、鞭毛は持ちません.
- 偏性細胞寄生性で生きた細胞のみに感染します。
- 他の細菌には見られない特異な生活環を持っています.
- 基本小体(EB):
基本小体は宿主から宿主へ伝播する感染性をもちます. 0.3μm前後の球形の形態を示し,内部には核が偏在し,リボゾームが充満した細胞質があり,細胞膜,細胞壁に包まれています.
- 網様体(RB):
感染した基本小体はやがて網様体に変わります.申様体は0.5-1μmで内部は核,細胞壁の区別のない均一な構造です.非感染性で増殖性細菌です.網様体は二分裂を繰り返しながら,増殖し,感染後20-24時間後に成熟中間体へと再び基本小体に成熟変換します.
- 遺伝物質としてDNAを持ちますが,さらにRNAを有しています.
- ムラミン酸を有する細胞壁に持ち,細菌細胞の形態をしています.
- 多くの抗生物質に感受性があります.
- ウイルスと同様に感染細胞内に封入体を形成します.EB・RB形態的機能的変換をおこない、喰食胞に由来する封入体で増殖する偏性細胞寄生細菌のサイクルがあります.
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病原性
クラミジアはヒトを含む哺乳動物、鳥類に広く分布し、あるものはヒトに感染し呼吸器や泌尿生殖器、および眼に感染し、疾病を起こします.
媒介動物の介在なしに、直接・間接的接触、塵埃、飛沫などの吸入によって伝播します.近年、性感染症(STD)の主な原因となっています.
- Chlamydia trachomatis (トラコーマクラミジア)感染症
Chlamydia trachomatisは,トラコーマ,尿路・生殖器感染,新生児肺炎など様々な症状を引き起こします.
- トラコーマ:
結膜の乳頭状や濾胞性肥厚を示す慢性眼疾患である.感染経路はタオルなどよる接触感染です.非常に強い感染力があるので患者の眼脂や涙のついた器物,タオルなどは滅菌するか焼却しなければなりません.
トラコーマでは漏胞の形成,破壊,瘢痕化から角膜実質へ広がり,視力障害,失明に至ることがあります.トラコーマクラミジアは日本ではほとんどみれず,アジアや,アフリカ諸国で多発しています.
- 尿路性器感染症
Chlamydia trachomatisによる尿路性器感染は性行為感染症の代表的疾患です.潜伏期の後,排尿困難,排尿痛を経て,男性では副睾丸炎,女性では子宮内膜炎,卵管・卵巣炎にまで発展することがあります.しかし無症状であることも多く,不妊症になることも少なくありません.
- 新生児肺炎
- C. psittaci (オウム病クラミジア)感染症
鳥類(特にオウム,インコ類)や家畜などの排泄物が感染源となります.排泄物は飛沫感染や塵埃感染をおこす気道感染症で,カゼ様症状から肺炎を起こします.また,肺障害を伴わずに敗血症やにチフス様症状に進行することがあります.
- C. pneumoniae (肺炎クラミジア)感染症
オウム病クラミジアと臨床症状が似通っており区別されにくいが,ヒトからヒトへ飛沫感染するとことが異なっています.
疫学
- ヨーロッパ、アメリカでは男子の1-7%、女子5-20%の割合で無症状、または軽微症状の感染が見られています.
- 日本では非淋菌性尿道炎の30-50%がクラミジア性であると考えられています.また,妊婦の6-7%は感染していると言われ,性に対する考え,性病の知識・予防法の普及が対策と鳴ります.
- クラミジア感染症では病後免疫は弱く多くは再感染します.
- テトラサイクリン系の抗生物質が第一選択薬として用いられますが、新生児や乳児のことを考え、妊婦または妊娠の可能性のある患者にはエルスロマイシンやクラロスマイシンなどのクロライド系が用いられます.
- オウム病に対しては汚染したペット・鳥の輸入,国内でのペット産業に対する規制対策が必要です.トラコーマは貧困社会の疾患といえ,撲滅には衛生状況の改善が必要になります.特に発展途上国でのトラコーマによる失明者は年間600万人にも上ることから対策が急がれています.
C. pneumoniaeが心疾患に関与しているとうい説があります.テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗生物質を過去に投与を受けた患者は急性心筋梗塞の発症率を低く抑えられることを示唆する疫学的データがあります.
細菌とリケッチャおよびクラミジアの比較
いずれもリボソームがありタンパク合成系はすべて持っている.また,抗生物質にたいして感受性がある点が似ています.細胞壁を持っている点も共通しているが,クラミジアはムラミン酸を欠如しています.エネルギー産生系はクラミジアのみが寄生宿主に依存しています.
分布はクラミジアが鳥類,哺乳動物に不顕性感染しているのにたいして,リケッチャは哺乳類(ヒトを含む),節足動物内です.
ヒトへの感染ベクターは細菌,クラミジアにはないが,リケッチャは節足動物です.細菌は宿主細胞外でも増殖できるが,リケッチャではバルトネラ属を除いては生細胞内でのも増殖し,クラミジアも細胞内でのみ増殖し,人工培地では発育しません.
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